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堀池喜一郎さん「年齢関係なく高齢者も“個性を発揮”するべし」

シニアの地域参加指南のスペシャリストでNPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹の創設者で現在、好齢ビジネスパートナーズ世話人の堀池喜一郎さんにお話を伺いました。現役ばりばりの企業人だった堀池さんが、地域での活動をはじめたきっかけや現在までの活動内容を深堀りしお話いただきました。

 

好齢ビジネスパートナーズ世話人の堀池喜一郎さん
好齢ビジネスパートナーズ世話人の堀池喜一郎さん

 

堀池喜一郎さん

三鷹市在住70代。電機メーカー勤務を経て、2000年 高齢者の地域参加プラットホーム「NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹」を創設、地域情報化関連のサービス事業を行政や企業と協働して展開。2003年 日本経済新聞社の地域情報化大賞。2004年 シニアが孫世代と竹とんぼ作りで交流する講師育成の会「どこ竹@竹とんぼ教室」設立。2009年「多摩CBネットワーク」設立。同時に「地域と私・始めの一歩塾」でシニア・女性に、地域信頼のためブログ発信からコミュニティ作りを薦め、200人のCBブロガーを育成。2012年3月より、”知恵と原資を持つシニア(好齢者)”を地域ビジネスに参加させる活動を目的とした「好齢ビジネスパートナーズ」を設立。

 

── 地域活動をはじめたきっかけからお話をお願いできますでしょうか?

地域活動のはじまりは、大学の同窓会での1つの問題意識から

堀池 会社員時代、1人でできる得意技であるITを活かそうと思っていました。そんなとき大学の同窓会で、「作ったホームページをどうして活用しないのか?」と質問しました。返ってきた答えは「誰も教えてくれないから」ということでした。それなら自分が得意とするITを活かし、勉強会をやればいいと定期開催し教えるようになったのがはじまりです。

 

── 事業を法人化して拡大されましたが、その辺りの経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか?

助成金500万円を獲得し法人化

堀池 勉強会を定期的にやっていると高齢者の中にもこんなに立派な人が多くいるんだと感じました。その後、高齢者にIT(メールとインターネット)を教えることが重要だと感じ、定期的にIT講座を開催。そうしている中、三鷹市の企画関係者の目に止まりこの活動が、三鷹市のSOHO CITYみたか構想(※1)に繋がるとし、2000年に三鷹産業プラザが建立時に三鷹産業プラザ施設内で講座をやらないかと提案されました。

そして、講座をやるなら組織がいるなと考えていた時に経済産業省の情報システム活用型シニアベンチャー等支援事業に応募。そこで、500万円を獲得し、NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹という組織を作り、本格的な地域での活動がはじまります。

会社員時代と重なっているのですが、 会社には、この活動で必要なものは会社製品を購入する、活動で得た知識やスキルなどは会社に還元する、活動は土日に行うということで了承してもらいました。

※1 SOHO CITYみたか構想は、市のSOHO施設と民間のSOHOオフィスを拠点に市内に敷設された光通信網を活かして情報関連企業の集積とSOHOなどの創業支援をおこなうもの

 

市民向けパソコン講座が大好評。想定以上のニーズがあった。

堀池 株式会社まちづくり三鷹(※2)が、三鷹産業プラザ内に喫茶店を作り、机の上にノートパソコンを置き教室になる特別な部屋を作りました。そして、まちづくり三鷹が市民向けパソコン講座が常設されることを市報に掲載されます。 市報は3月19日に掲載されたのですが、その日の朝7時からパソコン教室の申込電話が鳴り響き、2時間で4月〜6月分までが完売。

ニーズがあるとは思っていたが、ここまでかと感じました。 7月の講座も急遽追加したが、それも2時間で完売。結局、9月くらいまでいっぱいとなりました。市民向けパソコン教室の勢いはこの調子で3年続きます。

※2 ㈱まちづくり三鷹は三鷹市の第三セクターとして1999年9月に創立した三鷹産業プラザに居を構えるまちづくり会社

 

 

── シニアSOHOは100人以上の会員がいらっしゃいますがどのように集まったのでしょうか?

「1人でやる」「得意技を活かす」に共感

堀池 第一回SOHOフェスタで登壇し、ただならぬオジサンという話をしました。立ち見が数十人入るほどの大盛況となり、その場でシニアSOHO普及サロン・三鷹の会員に入会。「1人でやる」「得意技を活かす」の考えに、同じような考え方の人が集まってきて組織になりました。ここで同年11月に法人化するときのコアメンバーも集まりました。

その後、シニアがシニアに教えるノウハウがあるプロフェッショナルな方と出会ったことで、パソコン初心者であるシニアに教える方法を習得します。メーリングリストを作り100人のシニアが参加。メーリングリストを使い地域のわからないことを投げかけるとすぐに返事があり、会員相互で投稿し会員の活性化や地域情報の共有ツールとして凄く役立ちました。

 

猛烈に営業活動を行う

堀池 市民パソコン教室を開催しはじめた翌年の2001年、国の施策で三鷹市役所と組み、3500人のIT講習を行います。3500人を教えるには、翌年160人くらいの講師が必要でした。話があった際、20人しかいなかったのですが、市役所の協力もあり講師を育成する講座を実施。講師数を増やし、3500人に教えることができました。

その後は、2003年くらいまでは猛烈に営業をしていました。市役所からもシニアSOHO普及サロン・三鷹と連携した提案を各所に出していただきました。猛烈に営業したことで引く手数多の案件がまいこんでくるようになります。

2005年時点で年間6000万円の人件費収入を得るところまで拡大。そのタイミングで代表を降り、シニアSOHO普及サロン・三鷹の経営から退きます。現在(2012年)も収入は伸び続け、人件費収入は年間1.2億円と順調に拡大しています。

 

── 代表(当時)の判断がすべて当たったのは、どうしてなのでしょうか

すべての判断が当たったのは、容易でないほうを選択したから

堀池 容易でないのはどっちか考え、容易でないほうを選んだことが成功要因だと分析しています。いつ事業が終わるかわからない状況でしたので「一番容易ではないプランであれば競合はやれない」という考えで容易でないほうを選びました。

 

堀池喜一郎さんインタビュー風景
インタビュー風景

 

── シニアSOHO以降の活動をお聞かせください

2005年からは竹とんぼ、コミュニティビジネス普及、ブログ普及をやる

堀池 代表を降りたあと、竹とんぼの普及活動を行いました。活動をブログで報告していくことで次々と良い人が入ってくるという流れができ、竹とんぼの普及は大成功します。この活動を3年し、ブログを活かすスキルを身につけました。

その他、竹とんぼ普及活動と並行し、コミュニティビジネス(以下、CB)の経済産業省の関東経済産業局の推進委員として執筆や委員への出席などを行っていました。しかし、この活動は、直接、人を動かすような活動でないため、あまり意味がないと感じるようになり、現場で人を動かさないといけないと感じます。

2009年、これまでの活動をやめ、多摩地域ではコミュニティビジネスの普及をするため多摩CBネットワーク(※3)を作り、三鷹では三鷹CB研究会という団体を発足させました。三鷹CB研究会の活動では、竹とんぼ普及活動で得たブログの活用法を活かし、ブログをビジネスのために使ってもらうための方法を講座で教えることをはじめました。

3年ほど経った2012年、三鷹CB研究会での活動ではペースが遅いと感じ、好齢ビジネスパートナーズを立ち上げます。

※3 多摩CBネットワークは多摩地域の様々な関係者をつなぐネットワークでメーリングリストやシンポジウムを通じて会員が交流している

 

 

── 現在、複数の団体へ所属されているかと思います。全体とビジネスの繋がりを教えてください

連続的に得意技を習得、現在に至る

堀池 個人の活動を成功させるには「得意技を持って、それを活かす」のが条件と思っています。会社員時代は「ITを初心者に教えること」、シニアSOHO普及サロン・三鷹時代は「メールの活用のプロフェッショナル」、竹とんぼでは「ブログの活かし方」であり、連続して変化してきています。この得意技をシニアの地域参加やICT講習に活かしています。

個性を発揮し継続的に「シニアの地域参加、地域活動に活きるICT講習」をテーマにした情報発信について、ブログが2つとFacebook合わせて累計1000件発信しました。同じテーマで専門性を発信しているので、講演の依頼やメーカーのアクティブ・シニアに関する研究会やプロジェクトへの参加依頼などが頻繁に来るようになりました。

図にすると現在の活動とビジネスとの関係はこのようなイメージになります。

堀池喜一郎の近況2013,ソーシャルメディア発信,講習会,ビジネスへつなげる

 

── 堀池さんの現在の活動について。「やりがい」は色々あると思いますがこれというものを教えてください。

ひとつは、シニアにICTを教える活動では、受講後にICTツールをビジネス利用し成功すること

堀池 1つ目は「講座」についてです。例えば、ブログ講座なら受講生がブログにハマり、ブログで発信することでビジネスがうまくいくサイクルを作っている人が出てくることがとても嬉しいしやりがいになります。

事例を2件あげますと、1件は、ブログ講座に参加した日野市の宮崎紀代さんです。宮崎さんはステンシルの講座を広めるためにステンシルの図案を掲載したブログを描くようになります。その結果、月に5件の常設講座ができるようになり、現在72歳だが、死ぬまで続けられる仕事となっています。

→宮崎紀代さんのブログ「わたし流とステンシルと日々のあれこれ

 

2件目は三鷹市の角木優子さんです。三鷹でブログ講座に参加。1人で三鷹に事務所を借りて起業します。ブログには自分の教え方などを書き毎日更新しています。

→角木優子さんのブログ「山と数学、そして英語。

 

お二人ともブログを毎日書くことで、お客さんが来るようになりビジネスとして、うまくいくようになりました。

 

もうひとつは、私がやっているICT講座スキームを使い、さらにビジネス展開する団体との出会い

堀池 2つ目のやりがいは、「団体」が自分の仕組みを活用し新たなビジネスをはじめることです。 事例は、小平市のNPO法人Mysyle@こだいら(※4)の竹内千寿恵さんです。依頼が来てブログ、動画講座、講師講座をやりました。その後、動画発信のノウハウを活かし、市からプロジェクトを獲得されました。自分たちの仕組みを利用してくれるということはそれだけ価値があると感じてくれていたとくことで嬉しいです。さらにその仕組を活かし、新たなビジネスに繋げていく団体と出会うことも嬉しくやりがいに繋がってます。

※4 Mystyle@こだいらは、小平市で活動する地域密着コミュニティビジネスの中間支援組織団体

 

── 現在の一番大きい課題を挙げるとしたら?

課題は「まだビジネスの仕掛けになっていないこと」

堀池 講座ビジネスのスキームだと人間が関わっていないと成果を生まず、大きくなりませんし、人間を増やすと品質が悪化してしまいます。 現在は、Skype(※5)を使った新しいビジネスモデルを模索中。現時点で受講生の接触時間が長くなることがわかってます。多様な受講生の要望にこたえるには最適なものになりうる可能性もあり、ビジネスモデルとしてもかなり期待しています。

※5 Skype(スカイプ)とはマイクロソフト社が提供するインターネット電話サービス

 

── 堀池さんの今後の活動について話せる範囲でお伺いしてもよろしいでしょうか?

今後は、高齢者のたまり場をつくりたい

堀池 起業支援だけでなく、台所を設置し一緒に朝ご飯を作るとか絵を書いたりとかすることで元気をだすなどの少し変わった場を作りたいと考えています。現在は、創業補助金に応募し、立ち上げる準備をしているところです。

 

 

── 今後、好齢ビジネスを始めたい方へメッセージをお願いします

堀池 やはり高齢者は個性発揮だと思います。人がやっていないことで役立つことをやるということは年齢に関係がありません。詩人のサミュエル・ウルマン(※)は、70歳でも青春であるといっているがそういう気持ちで取り組んだほうがいいと思います。
サミュエル・ウルマンの「青春の詩」

 

 これから始める方へメッセージを送る堀池喜一郎さん
アツい思いを話す堀池喜一郎さん

 

── オススメする書籍を教えて下さい

竹とんぼからの発想 手が考えて作る (Fukkan.com) 秋岡芳夫著

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 リンダ・グラットン著
シニアよ、ITをもって地域にもどろう 堀池喜一郎共著

 

 

── 堀池さん、ありがとうございました

(インタビュー・文: KOKEGUCHI, AYA )

 

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