丸田孝明さん「”できるコト”と”わかるコト”を整理し何ができるか棚卸ししよう」
調布市で調布飛行場を使い、大島新島など伊豆諸島の新鮮な野菜やお魚を調布へ届けるコミュニティビジネスを手がける一般社団法人 調布アイランド代表の丸田孝明さんに活動をはじめたきっかけや現在の状況などについて伺わせていただきました。
丸田 孝明さん
1949年山形県生まれ。山形県立鶴岡南高等学校を卒業後、1968年日本交通公社入社。現役時代は旅行営業、企画、社員研修などを担当し、2009年ジェイティービー能力開発を定年退職。その後、調布の街を活性化するため市内の経営資源を最大限に活かしたコミュニティビジネスを行う一般社団法人調布アイランドを設立。現在、調布飛行場を経由してつながる伊豆諸島と連携して、調布と島々を活性化させる多彩なプロジェクトを展開している。
── 地域活動をはじめたきっかけからお話をお願いできますでしょうか?
前職の繋がりでは継続的に仕事をするのが難しく、地域の中で活動をしこうと思いたつ
丸田 会社員時代は地域を意識したことがなく、家と会社の往復する組織人間でした。地元で酒を飲んだこともないし、知っている人といえば、自分のマンションで理事会をやったときの知り合いくらいでした。定年退職した瞬間に周りに知っている人が1人もいない状況だったのです。退職してから約1年は前職の絡みで少しやっていたが状況は厳しかったです。60歳で定年退職したので年金も半分でお金も足りないのです。勤めていたときの、旅行会社の研修のからみでビジネスをやろうと考えましたが、前職の会社の仕事とも競合してしまうし、 仕事は単発になってしまうのでなかなかむずかしかったです。
丸田 前職のメンバーで飲み会をやっていても昔の話ばかりで将来的なことに発展することはなかったのもあり、地域の中で活動を起こしていこうと思いたったのが地域と関わるはじまりです。
── 地域での始めのアクションから調布アイランドの設立までを教えてください
コミュニティビジネスを知る
丸田 地域デビュー歓迎会という定年退職者や子育て終わったお母さんたちに地域貢献をやりませんか?というボランティア色が強い自治体のイベントに参加しました。ボランティアではなく、自分の持っているノウハウを提供するのに対価をもらうことで、責任が持てるビジネスとして展開できればと思っていたときに、そのイベントで調布アットホーム(※1)代表の石原靖之さんと出会い、コミュニティビジネスというやり方を知りました。
※1 調布アットホームとは、調布市でコミュニティビジネスという手法で地域の問題や課題を解決する組織
調布飛行場への着目は飲み会の席でのアイデア
丸田 地域デビュー歓迎会後、石原さんの飲み会などに参加しているとき飲み会の席で、調布の魅力は何だろうと考えたとき、調布飛行場の存在と、調布と伊豆諸島をつなげるビジネスアイデアを思いつきました。飲み会のあと石原さんからのメールで面白いから具体化しないか?と提案を受け、一度、アイデアを整理し企画書をおこしてみます。
ビジネスコンテストで賞金を貰いやらなければいけない状況に(笑)
丸田 その後、調布アットホーム主催のCB事業コンペ(※2)というビジネスコンテストに応募してみました。すると、5万円ではありますが受賞してしまいました。貰ってしまったのでこれはやらないといけないと思い行動に移ります。一緒にやりたい人を募集したら数人が手をあげてくれてリサーチからはじめます。月1回開催される物産展にて商工会の人たちと名刺交換をし、諸島側にもニーズがあるとわかりました。中でも新島の木村さん(千葉大の准教授)が関心を示してくれ、芽があるかどうか相談するようになります。
※2 調布アットホームの純利益である5万円を使い事業計画をつくるきっかけづくりとして開いたコンペ
調布飛行場祭りの開催を目標に動き始める
丸田 調布飛行場での調布飛行場祭りへの出展を目標に動きだします。コンペの賞金5万円を使い、前職の知り合いの紹介を受け、伊豆大島で明日葉農家の方とお会いしました。 現地の農家もこれまでいくつかそういう話があったのですが、東京で開催するイベントベースでイベントが終わると終了になるものばかりで継続していかないという課題を抱えていました。通常捨ててしまっている明日葉の茎を活かせないかという話にもなりました。翌日、漁協の定置網の船長と直談判し、地域活性化の支援としてイベントをやりたいという話をしたところ 船長がイベントに魚を出すことを許可してくれました。
第一便が飛び取引がはじまる
丸田 昨年9月に伊豆大島からの物産を運ぶ第一便が飛びました。ただし、船長から許可をもらったものの、定置網は10月初めで禁漁になってしまい、目標にしていた調布飛行場祭りへの出展はできませんでした。そのため、次のシーズンまでは明日葉をメインに卸すことになります。新島や大島の新鮮な特産物を武蔵野市場や、調布の飲食店に卸すことができるようになりました。
報道を通じた仕事の増加、認知度の広がり
丸田 読売新聞・朝日新聞・日本経済新聞に掲載され、メディアへの露出も増加してきました。2012年5月には、魚が届く様子がTBSで放映されまして、その後はいよいよスタッフ3人、忙しくなって来ます。
現在は提案してくれる状態になった
丸田 現在はメディア露出効果により、色々な団体などから提案をいただくようになりました。例えば、美味しく食べる以外に子どもに食育のために仕入れたいという提案もいただきました。200人規模の幼稚園の給食に、島の魚をおろせないかという話が来ています。その幼稚園では野菜を自給しているのですが魚を食育として毎月200人分使いたいという依頼をHPを通じて受けました。高級魚の金目鯛を30匹卸しました。
インタビュー風景
── ブランドについてのお考えを教えてください
コミュニティがつくるビジネスブランドはキズナをつくりながらブランド化していくことが重要
丸田 本当のブランドとは、消費者から認知されることを通じてつくり出されるブランド であると考えております。現在、国が進めているような第6次産業(※3)によるブランド化は、地域によって競合してしまい、広告代理店主導になって長続きしない可能性があります。本当に地域で好きなファンをつくって、キズナをつくりながらブランドをつくっていくことが重要だと考えてます。そのためには、物流等交流以外のいろんなところを巻き込んでいく必要がります。
※3 農業や水産業などの第1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を表す
── 事業規模をお伺いしてもよろしいでしょうか
取引額は年間300万円程度
丸田 現在の取引額は年間300万円程度とまだまだ少ないです。今年は黒潮の影響で取引高が低かったのが原因ではありますが、黒潮の影響がなければ1.5倍ペースでのびています。来年は1.5倍になるようにがんばります。ただ、継続してやっていくのが一番大事なんです。
── 活動している上でのやりがいを教えてください
島の人とのコミュニケーションがやりがい
丸田 島の人とのコミュニケーションが一番のやりがいです。例えば、6月に、それまで注文から魚の確保・配達を島でやっていた人(くさやの社長)が倒れてしまい、存続を危ぶんだとき 新島の商工会長とくさやの組合長が仕事を引き継いでくれたことがとても嬉しかったです。普段から飛行場であったり、送り迎えをすることで、少しずつつながりができてきています。今年は明星大学のゼミの学生10人が新島で合宿をするなど、人との交流も生まれてきています。
── 現状で一番の課題を教えてください
課題は「プロモーション」と「配達する仲間不足」
丸田 1つ目はプロモーションが課題です。予算の関係もあるから一緒にやってくれる人を募集しています。
2つ目は、仲間を集めたいです。飛行場から飲食店や市場などへの配送が大変で実際に運ぶ仲間が欲しいと思っています。あと、飛行場関連会社へお店をアピールする等、会社としてバックアップしてくれる人を捜すことも課題です。
── 今後の展開はどうお考えでしょうか
丸田 「食べられる」「おいしい」とわかればお店も増えてくると考えており、ファン倶楽部をつくったり、地道にお客を増やしていき、今よりも強いものにしていきたいと思っています。23区の人たち(特に世田谷区)を美味しい魚が食べられるということで調布に呼びたいと考えているのでもっと調布に人が来て欲しいと思っています。
現在はインターネットからの依頼に応えるので手一杯の状態で、断る場合も多いのです。飛行場は三鷹と府中にまたがっているので周辺地域に運んでくれる人が出てくれば各地域への普及も視野にいれていきます。
新しいものでは、調布で作られた独自メニューを島の民宿で出すことや生花の取引をやりたい(生産者とダイレクトにやれれば、市場を通すより2日早く届く)と考えております。
── これから活動を始める方へのメッセージをお願いします。
まずは「できること」と「わかること」を棚卸ししよう
コミュニティビジネスなどこれから始める方へ思いを話す丸田孝明さん
丸田 「できること」と「わかること」をきちんと分けましょう。わかったと思っているで出来ないことが多く、わかっただけでは意味がありません。自分で「できること」はなにか?ということをしっかり棚卸し、「できること」が地域の人や地域とどうつながるかを整理すると自分がやれることが見えてきます。まずは、「できること」「わかること」の棚卸しをやってみるといいでしょう。
── 丸田さんオススメの書籍を教えてください
・あなたが創る顧客満足 – 基本のキホン (日経ビジネス人文庫―基本のキホン) 佐藤知恭(著)
── 丸田さん、ありがとうございました!
(インタビュー・文: KOKEGUCHI, AYA, TOMOKO )
活動に興味を持ったらすぐに丸田孝明さんに連絡!